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» 2011年01月17日 10時00分 UPDATE

eBook Forecast:1月前半の注目すべき電子書籍市場動向

「電子書籍市場の最新動向ってどうなってるの?」――そんな方のためにお届けする「eBook Forecast」。今回は、CESで予想どおり多数発表されたタブレット端末や、大日本印刷・NTTドコモ連合がいよいよ開始した電子書籍ストアなどについてお届けします。

[前島梓,ITmedia]

 電子書籍“元年”と騒がれた2010年が終わり、2011年に入ってまだ半月ですが、電子書籍市場はその勢いを止めることなく、話題が豊富でした。それらは大きくハードウェアとプラットフォームに分けられますが、ここでおさらいをしてみましょう。

今年の話題をさらいそうなタブレット端末多数登場

 1月6日から9日かけて米国ラスベガスで開催された米国最大の家電ショー「2011 International CES」では、各社からタブレットが相次いで披露されました。その数は50機種を越えるともいわれています。2011年はまさにタブレット天国となりそうな様子で、デスクトップPCやノートPCの話題は急速に注目を失いつつあるようにすら思えてきます。なお、今回のCESについては、ITmediaでも「特集:2011 International CES」として詳しく紹介されています。

 前回お伝えしたように、今回のCESではOSにAndroid、それもタブレットに最適化された最新のAndroid 3.0(Honeycomb)を搭載したタブレットが幾つか披露されました。Androidは2010年12月にバージョン2.3(Gingerbread)が発表されたばかりで、Honeycombは一般にはまだプレビュー扱いですが、Motorola、Dell、東芝、Lenovoといったベンダーのほか、韓国のLGエレクトロニクスや台湾のASUSなどがいち早くこれを搭載したタブレット端末をCESで披露し、自社の技術力の高さを世界に向けてアピールしました。

 これらの端末の一部は今後数カ月のうちに市場に登場するとみられ、先行しているiPadを猛追することになるでしょう。以下は、CESで発表されたタブレットの一部です。流行に敏感な読者の方なら、写真を見ればどこの端末か分かるかもしれませんが、筆者のようにスクリーンに何も映っていなければどの端末も同じように見えてしまう方のために、画像をクリックすると紹介記事に飛ぶようにしてあります。

VIERA TabletStreak 7XOOMEee Slate EP121 あなたは分かる? CESで発表されたタブレットたち

 一方、PCの世界では圧倒的なシェアを持ちながらも、タブレットなどに代表される新たな市場では出遅れた感のあるMicrosoftもWindowsの次期バージョンでようやくARMアーキテクチャをサポートすることを宣言し、巻き返しを図りたい考えです。ただし、このWindowsの次期バージョンがリリースされるのは現在の予定で2012年とやや遅めです。

 Microsoftにとって2011年は我慢の年になりそうですが、一方で調査会社のシード・プランニングがまとめた日本国内のタブレット端末市場動向についての調査結果によると、「AndroidとWindowsのシェア争いが注目」とされています。上述の話からすれば「あれ? 2011年はMicrosoftは何で勝負するのだろう」と思われるかもしれませんが、今回のCESではIntelのAtomプロセッサを搭載したWindows搭載タブレットを東芝が披露していますし、ASUSもWindows 7 Home Premiumを搭載したタブレット「Eee Pad」シリーズを発表しています。このことから、“Wintel”タブレットの目がまったくない、と断言するのはまだ時期尚早でしょう。企業からのタブレット需要にこれらが採用される可能性もありますので、シード・プランニングのレポートはそれを考慮に入れたのかもしれません。

王者ドコモの電子書籍サービスが開始

 電子書籍市場の動向を伝えるはずの連載が、タブレットの紹介で終わるわけにはいきません。国内の電子書籍市場にも目を向けておきましょう。

 注目したいのは、とうとうNTTドコモの電子書籍サービスが開始されたことです。1月12日には、NTTドコモ、大日本印刷(DNP)、CHIの共同事業会社であるトゥ・ディファクトが、ドコモのスマートフォンなどに向けた電子書籍ストア「2Dfacto」をスタートさせました。当初のラインアップはほかの陣営とだいたい同じレベルですが、記者会見では「春までに10万冊のラインアップは確実に達成できる」と強気を崩していません。

tnfigntt2.jpg 複数のビューアが内包された2Dfactoアプリ

 対応機種はXperia SO-01B、GALAXY S SC-02B、GALAXY Tab SC-01C、LYNX 3D SH-03C、REGZA Phone T-01Cのほか、今後発売予定のブックリーダー SH-07C、Optimus chat L-04Cの7機種で、電子書籍ストア/ビューア一体型のアプリが用意されています。このアプリは、XMDFビューアやT-Timeビューア、さらにセルシスのBS ReaderやDNPのImageViewerといった複数のビューアを1つのアプリに内包しており、ファイルフォーマットの違いを意識することなく電子書籍を読むことができる点に特徴があります。

SH-07C ブックリーダー SH-07C

 また、1月11日に行われた記者発表会では、2Dfactoの発表と併せて電子書籍専用端末「ブックリーダー SH-07C」も発表されました。シャープのメディアタブレット「GALAPAGOSモバイルタイプ」をベースにしており、3G通信機能を備えているのがポイントとなります。この端末では、電子書籍ストアを上述の2DfactoとTSUTAYA GALAPAGOSから選択できるのが珍しいのですが、やや強引に2つのストアを利用可能にしているだけで、まだ一体感に欠ける部分があります。とはいえ、現在市場に登場している電子書籍端末の中では、かなり期待できる製品ではあります。

 キャリア発の電子書籍専用端末としてはKDDIから発売されている「biblio Leaf SP02」に次ぐ製品となりますが、電子ペーパーを採用したbiblio Leaf SP02と、液晶を採用したブックリーダー SH-07Cと、選択肢が豊富になってきているのはユーザーとしてうれしいところです。また、NTTドコモも早ければ今秋にも電子ペーパーを採用した電子書籍端末を発売するかもしれないと読売新聞が伝えており、ドコモの電子書籍ビジネスに対する本気度がうかがえます。

結局のところ、わたしの読みたい本は電子書籍で提供されているのか?

 ハードウェア、プラットフォームがかなり出そろってきた印象ですが、正直なところ、まだまだ欲しい書籍の電子版がないということは往々にしてあります。「TSUTAYA GALAPAGOS」や「Reader Store」といった電子書籍ストアで取り扱う書籍点数は微増を続けていますが、実際、出版取次大手のトーハンが発表している2010年の年間総合ベストセラーを参考に、そのうちどの程度が電子書籍でも提供されているのかを調べてみました。

順位 書名 電子書籍版の有無
1 もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら
2 バンド1本でやせる! 巻くだけダイエット ×
3 体脂肪計タニタの社員食堂 500kcalのまんぷく定食 ×
4 ポケットモンスターブラック・ホワイト 公式完全ぼうけんクリアガイド ×
5 1Q84(3) ×
6 ポケットモンスターブラック・ホワイト公式イッシュ図鑑完成ガイド ×
7 伝える力 「話す」「書く」「聞く」能力が仕事を変える!
8 新・人間革命(21)/新・人間革命(22) ×
9 創造の法 常識を破壊し、新時代を拓く ×
10 くじけないで ×

 半ば予想していたことではありますが、ほとんど全滅といった感じです。出版各社は、電子書籍を念頭に置いた著者との契約を順次締結あるいは更新していますが、電子出版に合ったワークフローの改善も必要ですし、紙の書籍との売り上げバランスも考える必要があるため、一朝一夕でこの傾向が大きく変わることはないでしょう。

 こうした現状を考えると、「電子書店」「オンライン書店」「リアル書店」をうまく連携させようというトゥ・ディファクトの戦略は理にかなっています。電子書籍で出ていなければ紙の本を可能な限りストレスなく入手できるようにしておくことで、トゥ・ディファクトのプラットフォームでは「読みたい本に必ず出会える」ようになるわけです。Amazon.comやGoogleなど海外勢が参入する前に、どこまでユーザーフレンドリーなサービスを構築できるか、トゥ・ディファクトの動きに引き続き注目したいところです。

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