最新の電子書籍端末を求めて香港を行く香港電脳訪問記(1/2 ページ)

先達廣場や黄金電脳商場、香港の熱すぎるスポットに最新の電子書籍端末を求めて足を踏み入れてみた。かつてのカオスな雰囲気は今どうなっているのか。

» 2010年12月24日 10時30分 公開
[鈴木淳也(Junya Suzuki),ITmedia]

今回の電脳訪問記の舞台は香港

 電子書籍に限らず、以前のリポートでも紹介したデジタル出版や新しいタイプのインタラクティブコンテンツなど、今後モバイルデバイスとコンテンツを組み合わせたソリューションは多数登場することになるだろう。

 ところが、これら最新コンテンツを楽しむ上で、しばしばスペックの高い最新端末が要求されることがある。例えば、雑誌などのデジタルコンテンツのAndroid向け配信ではAIRランタイムが要求されるため、Flashの動作するAndroid 2.2以上のプラットフォームが必要となる。

 問題は、まだ日本ではこうした最新スペックの端末が少ないことで、コンテンツの利用で若干不便な面があることだ。また、大型液晶を搭載したスマートフォンやタブレット端末がなかなか日本市場に投入されないことで、その登場を待ち焦がれている方もいるかもしれない。

 今回はこうした最新コンテンツを利用するためのプラットフォームを入手するため、携帯電話業界では最もホットなエリアの1つである「香港」を訪問し、最新事情を追いかけてみた。

今回の電脳訪問記の舞台は、携帯電話業界で最もホットなエリアの1つである「香港」

 香港が携帯電話業界で熱いエリアだといわれる人気の理由の1つに、SIMロックが解除された、いわゆる「SIMロックフリー」「アンロック版」といわれる端末の入手が香港では容易なことが挙げられる。

 こうした端末はキャリアとの契約で買うものと比べると幾分高めだが、キャリアを問わずにサービスが利用できる上、現地でプリペイドのSIMカードを購入することで、安価に携帯電話通話やデータ通信のサービスが利用できる点にある。もっとも、違法電波を出す端末や人気ブランドの模造品なども普通に売られているので注意が必要だが、うまく使えばよりサービスやコンテンツの利用ライフが楽しくなることは間違いない。

香港の街のあちこちで携帯の巨大広告を見ることができる

 香港といえば携帯、携帯といえば香港といわれるのには理由がある。日本から地理的に近いということもあるが、香港では、携帯電話端末を販売する際は、SIMロックを解除して販売しなければならないという決まりがある。また、条件付きでSIMロックをかけて販売した場合でも、契約期間が終了したり一定額を支払ったユーザーの端末に対して、キャリアはSIMロックを解除しなければならない。そのため、多少高価ながら1年や2年といった縛りなしでSIMロックフリーな端末が入手できる。

 また、香港では、正規品を販売する店舗以外に並行輸入品や裏ルートで流れてきた不正品を扱う店舗が現実に多数存在する。例えば、香港にもかかわらずなぜか日本のソフトバンクの端末が普通に販売されていたり、他国で縛り付きで販売されている端末のSIMロックを不正解除して販売されていたりと、日本ではほとんどお目にかからないような光景によく出くわす。知っていて購入したのならそれは自己責任だが、知らずに購入したのなら、夜店で偽ブランドの品をつかまされるようなものだろう。だがこうしたところが香港の面白さの1つであり、買い物と観光を合わせて現地の空気を満喫してほしいと考えるポイントだ。

プリペイドSIMを入手せよ

 さて、香港に行く機会があればぜひ試してほしいのが、現地での「SIMカード」購入だ。香港ではデータ通信が可能なプリペイドSIMを容易に入手できる。もしSIMロックフリーな携帯電話やスマートフォンを所有しているなら、プリペイドSIMを挿入することですぐにインターネットに接続できる。SIMロックフリーな端末を所有していなくても、現地では多種多様なSIMロックフリー端末を広い価格帯から選択できる。

 海外ローミングでのデータ通信といえば、最近でこそ、ソフトバンクやNTTドコモが手持ちの携帯電話を海外に持ち込んで定額でのデータ通信を可能にするサービスを提供しているが、必要な端末さえ持っているなら現地でプリペイドSIMを購入した方が安上がりだ。

 例えばHutchison 3Gは98香港ドル(HKD、約1060円)がプリペイドSIMの基本料金だが、これでデータ通信が約3日間ほぼ無制限で利用できる。例えば、ソフトバンクの「海外パケットし放題」サービスを利用した場合、1日1980円(現在は1480円)で、動画などのサービスを利用する場合は2980円だ。どれだけ現地SIM購入がお得か分かるだろう。

 筆者の場合、すでにSIMロックフリーのNexus Oneを持っているので、今回はこの端末に挿すプリペイドSIMを購入したところから話を進めていこう。

すぐに必要なら空港で入手

Hutchisonの「3」ブランドのショップ ターミナル1の到着ロビーを進んだところにあるHutchisonの「3」ブランドのショップ。携帯端末のほか、プリペイドSIMの購入が可能

 香港の街中には多くの携帯ショップが存在するが、すぐにでも携帯のデータ通信を利用したいと考えているなら、空港でプリペイドSIMを入手するのが最も手早い。

 飛行機で香港国際空港に到着したら、ターミナル1の到着ロビーから上の階へと移動し、航空会社のチェックインカウンターがあるエリアを抜けてお土産屋やフードコートがある近辺に向かおう。ここに前述のHutchison 3Gなどの携帯キャリアのストアや、携帯電話を含む各種電子機器が入手できるストアが設置されている。ただし、筆者が今回現地に到着したのは22時台。すでにお店の大半は閉店しており、翌日のオープンを待たなければならない。というわけで、この日は空港のベンチで1泊し、プリペイドSIMを入手してから移動を開始することにした。


3G International Roaming Rechargeable SIM Card 今回購入した「3G International Roaming Rechargeable SIM Card」というプリペイドSIM

 翌朝、Hutchison 3Gのストアに顔を出してプリペイドSIMの購入相談をしてみると、店員が手際よく商品を用意してくれた。Nexus Oneを見せた状態で「データ通信が可能な一番ベーシックなもの」とリクエストしてみると、渡してくれたのは「3G International Roaming Rechargeable SIM Card」という商品。価格は98HKDで、初期状態で表記の金額がチャージされている。

 このSIMカードでのデータ通信の1日のチャージ金額上限は28HKDのため、約3日利用できることになる。名前の通り国際ローミングに対応しており、片道1時間程度でマカオや中国本土に移動できる香港では、こうしたローミング対応SIMカードの方が便利なのかもしれない。


セットアップが完了したNexus Oneのテザリングをオンにすることで、手持ちのiPhone 4もNexus One経由でインターネットに接続できた。なお、自動ローミングで「CSL」に接続しているが、データ通信はNexus One経由のため実際には「3」のサービスを利用している

 「設定方法が分からない」といって店員にNexus Oneを手渡すと、購入したプリペイドSIMを使ってすぐにセットアップしてくれた。数分と待たずに作業は完了したようで、その場でメール送受信やGoogle Mapsが利用できるようになった。香港国際空港では構内に無料Wi-Fiが張りめぐらされているが、それより高速で安定して利用できる印象だ。なお、今回は携帯キャリアの正規店でSIMカードを購入したが、現地のセブンイレブンなどのコンビニ(香港空港内にもある)でも購入が可能なようだ。ただし、取り扱いが限定されている上、セットアップサービスは期待できない。

 プリペイドSIMの購入でNexus Oneの3G通信が開通して以降、街の中心部に移動するまでの間、ずっと地図や香港の観光情報を参照することができた。Nexus OneはOSをAndroid 2.2にとアップデートすると「テザリング」機能が利用できるが、これを利用してiPhone 4やPCをインターネットに接続することもできる。通信環境も安定している印象だ。もし、「MiFi」などのWi-Fiホットスポット機器を持っているなら、そちらにプリペイドSIMを挿して利用するのも1つの方法だ。


香港では、地下鉄走行中でも携帯電話の利用が可能

香港地下鉄では駅だけでなく、走行中でも携帯電話が使える。マナー向上もあって車内で通話する人はほとんどいないが、日本と同じようにメールやWebのサービスを利用するために端末を常にいじっている人が多い

 ところで、香港では、「地下鉄走行中でも携帯電話の利用が可能」である。米国では地下鉄駅でさえ圏外になるケースが圧倒的に多く、筆者の経験ではニューヨークではほぼ圏外、サンフランシスコなど一部エリアで限定的に使えるレベルだし、日本でも駅構内では利用できるが、運行中は圏外になるのが一般的だ。ところが香港では駅間の移動中、果ては海底トンネルのような区間でも問題なく携帯電話が利用できるため、車両のあちこちで常時携帯端末をいじっている姿を見かける。

 筆者がはじめて香港を訪問した10年ほど前は、まだデータ通信のようなサービスはなく、あちこちで乗客が大きな声で通話をしている様子を見かけた。だが1〜2年と香港を訪問し続けていると、車内マナーが浸透したのか次第にこうした客の数は減っていったことを記憶している。時代は移り、通話しながらメール、そして各種Webサービスやソーシャルネットワークへと利用形態は変化し、いまの日本で見かけるような光景がそのまま香港でも広がっている。

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