インタビュー
» 2010年12月08日 09時30分 UPDATE

「ラブひな」170万ダウンロード突破の衝撃:Jコミで扉を開けた男“漫画屋”赤松健――その現在、過去、未来(前編) (4/4)

[山口真弘,ITmedia]
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わたしは熟女好きだが、作品に熟女は出てこない、それはなぜか

作業中の赤松氏 Gペンを手に作業中の赤松氏

── 週刊連載を手掛けながらいつ休まれているのか疑問ですが、いまはどういった形でお休みを取られてるんでしょうか。

赤松 うちは、例えば月曜日に始めると、翌週の月曜に完成です。で、1日休ませてもらってますので9日回しということになります。その8日間の仕事日は、初日から最後まで作画です。ネームや下書きはじわじわ進めて、最後まで行かない間に作画を始めちゃいます。だからとにかく作画ですね。

 今、アシスタントは6人います。連載では今ちょうどバトルをやってるんですが、バトルだと“どかーん”とか多くて、キャラが少ないからペン入れは結構助かるんですよ。Jコミが出た先週はちょうど“どかーん”してたので、何とかしのげました(笑)。今週もまだバトルしてるのでいいんですが、美少女キャラがいっぱい登場し始めたら相当危ない進行になりますね(爆笑)。

── ITの活用に積極的な反面、作画はデジタルではなく、いまもGペンをお使いだというのをどこかで伺ったように記憶しています。

赤松 わたしが『ネギま!』を始めた2001年ごろというのは、セルシスの「ComicStudio」の最初のバージョンが完成するかしないかのところで、赤松スタジオがその公式モニターをやっていたんです。結局『ネギま!』には間に合わなくてボツにしたのですが、それから2〜3年掛けてセルシスが力をつけて、今では立派なものになっているんですけど。

 『ネギま!』自体はアニメも終わったし、連載もいずれ終わるだろうな終わるだろうなと思いながらズルズルきてて(笑)、漫画のフルCG化はしていませんが、そうするだけの設備と力はあります。3Dソフトで背景描いてるくらいですから。でも、切り替える機会がなくて、いまだにスクリーントーンを削っています。

── Gペンのタッチが感性に合っているとか、そういうことではないんですね。

赤松 そういう芸術家めいたことはちょっと(笑)。そういうことを言う方もいますけど、わたしはそこまでうまくないですから。わたしは大学を卒業して編集者になろうと思って、講談社や週刊少年マガジンの仕事をしている編集プロダクションを受けたんですよ。ほぼ決定していたんですが、同時にマガジンの新人賞に入選してしまって、そちらを追いかけなさいということになって。そのあとすぐ「AI止ま」ですね。

── そこからずっと週刊少年マガジンでということなんですね。

赤松 そうです。本当は絵を描くのはそれほど好きじゃありません(笑)。そうそう、さっきのセルシスさんが『ラブひな』の後に営業しに来て、無料でComicStudio使ってみて要望があったら書類にまとめてくださいって言ってた方が、実はコミPo!の田中圭一さんなんですよね。

── おお、そうなんですか。そういえば田中さんはセルシスに在籍されていました。

赤松 そうです。当時ネクタイを締めてスーツを着て、いかにComicStudioに将来性があるかということを説いて回っていて、しかもうちの担当で。その時はいやらしい言葉とかは言ってなくて(爆笑)、でも劇画村塾っていう小池一夫先生のところの生徒さんで作風は知っていましたから、何かお下劣なこと言わないのかなと思っていたんですけど、言いませんでしたね(笑)。

── (笑)。先ほど絵を描くのは好きじゃないという話が出てきましたが、先日「オトナアニメ」の別冊(※洋泉社『別冊オトナアニメ シャフト超全集!!』)のインタビューで、「作品のアニメ化に当たっても自分以外の方の力をうまく借りてやっていくのが望ましい」といった旨の話をされていましたが、そういったコラボレーションにやりがいを見いだすタイプなのでしょうか。

赤松 例えばキャラクターの顔を正面から描くじゃないですか。わたしの絵は裏から見たらデッサンが狂ってるんですよ。それが「はじめの一歩」の森川(ジョージ)先生なんかは、裏から透かしてみても同じ一歩なんです。そういう人がやっぱり絵がうまい人なんです。わたしごときはダメだ、というのをずっと思っていて。

 アシスタントもそうですけど、いろいろな人の得意な部分を見抜いてですね、その力を最大限に発揮させつつ、やりがいとお金とを存分に与えてみんなを1つにまとめて一個の作品を作ってヒットさせる、でもわたしの願望はそこには入れないというのがわたしのやり方なんです。例えばわたしは、熟女好きなんですが、作品には熟女は出てこないじゃないですか(笑)。だいたい女子中学生ですよね。

── (爆笑)。これ……、記事にそのまま書いていいんですかね?

赤松 書いていいですよ、みんな知ってますから(笑)。女子中学生がパンチラするのを読者が求めるならば、バンバンやります。その辺りは相当割り切ったプロデューサーですね。わたしは漫画家というより「漫画屋」と言われることが多いのですが、徹底的にリサーチして、みんなが好きそうなものを描きます。

── なるほど、マーケティング主導ということですね。

赤松 江川達也さんなども昔そうしたことを意識してされていたようですね。赤松スタジオはなぜかアニメとも親和性が高くて、声優さんや監督と一緒に盛り上げて、自分のキャパよりも大きな何かを得よう、支持を得ようというのがとても好きです。『ネギま!』なんかもメディアミックスがなければ、まったくパワーが出ていなかったでしょうし。


 ユーモアを交えながら話す赤松氏は、一般的に抱かれている漫画家のイメージとはかなり異なる。迷いなく自らの理想に突き進むその姿はまるで実業家のようですらある。前編ではJコミの裏話も含め、あけすけに語ってくれた赤松氏だが、徐々に話は漫画文化の現状と、国内で盛り上がる電子出版に対する漫画家の視点からの苦言へと移っていく。

 明日公開予定の後編では、漫画文化に対する同氏の考え、そして彼を突き動かすものは何なのかをさらに掘り下げる。

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