「ブログ感覚で作れる電子書籍」の快進撃〜「パブー」吉田氏に聞く(前編)(3/4 ページ)

» 2010年11月22日 08時00分 公開
[山口真弘,ITmedia]

ある日いきなり「あれ、名前を見たことがある人が出てる」

情報通信白書のEPUB版など、特徴的なコンテンツがじわじわと増えつつある

── オープン以来、アマチュアの作品だけでなく、プロの方や、それ以外の特徴的なコンテンツが幾つも販売されるようになっていますが、中でも総務省の情報通信白書のEPUB版はかなり意外でした。あれはどういういきさつで?

吉田 当時、情報通信白書を電子書籍で出したいという意向があったらしく、紙の出版を請け負っていたぎょうせいさんが、電子書籍として販売できる仕組みやパートナー、あるいはサービスを探しておられたみたいですね。

 これまでもずっと総務省のサイトで紙と同じ内容のPDFのデータが無料公開されていますが、今回はちゃんと電子書籍で、というお話だったようです。EPUBのファイルを作っているんだけれど、このファイルをどこでどうやって売ろうかというのを試行錯誤されているタイミングでご連絡いただいて。紙の方が2900円のところ、パブーではEPUB版を1300円くらいで販売しました。

── ベンチマークの対象がなくて比較しにくいとは思いますが、反響はいかがでしたか?

吉田 今でこそ佐々木俊尚さんの本や、うめさんの本など、紙で流通しているのと同じものが幾つか出てきていますが、情報通信白書を取り上げさせていただいた7月の前半は一般の方が書かれた本が多かったので、そんな中で突然登場した総務省の白書は取り合わせとしては意外性があったと思います。「これってどういうことなんですか」といった問い合わせはいただいたりしました。


東京トイボックス うめ氏の「東京トイボックス」前後から、プロの漫画家がパブーに作品を出す機会が増加

── 次に漫画について伺いたいのですが、うめ氏は「青空ファインダーロック」の後、9月中旬に「東京トイボックス」が出たわけですが、その前後からプロの漫画家が作品を出す機会が増えてきたと思いますが、これについては事前に想定していなかったということでしたが、いかがですか。

吉田 うちのWebサービスの作り方でもあるんですが、サービスリリース後、ユーザーの反応や要望を見てから、機能追加を繰り返すんです。最初にリリースをしてからも機能追加や改善を続けていて、プロの方をお呼びすることをまだ考えていなかったタイミングだったにもかかわらず、漫画家の方が手持ちの原稿で本になっていないものや、既に絶版になっている作品をご自分の手で公開してくださって。いち早くパブーで作品を公開してくださったうめさんの作品を見たということもあるでしょうし、自分で販売できるらしいということを聞いて来ていただいたのかもしれませんが、予想外に多くのプロ作家の方にご利用いただき、本当にありがたいことです。

 サービス運営者側としては、ある日いきなり「あれ、名前を見たことがある人が出てる」みたいなことが何度かあり、第三者による無断転載の可能性もあるので、「ご本人なんですか、これ大丈夫なんでしょうか」といった本人確認の連絡をその都度していたり(笑)。やはりプロの方にとっても、小さいページ単位で公開できて自分で値付けができるのがやりやすかったのかもしれませんね。

 特に漫画に関しては「漫画 on Web*の話は漫画家さんの中では結構衝撃があったんじゃないかなと思っていて、あれはパブーよりもずいぶん前にスタートしているんですが、ああいうやり方もあるんだって1つの形を明示されたところに、誰でも参加できるWebサービスという形で出てきたパブーが、簡単そうだと思っていただけたのではないでしょうか。

注釈

漫画 on Web:漫画家の佐藤秀峰氏が運営するWeb漫画サイト。審査不要で出展でき、売上は出展者に100%還元されるのが特徴。


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