NTTドコモの強みは端末、サービス、ネットワークの積分――NTTドコモが発表した2010年度冬春モデルの中に、電子書籍端末が1機種含まれていた。配信プラットフォームの整備と合わせ、NTTドコモのネクストステージに向けたサービスの強化が進んでいる。
NTTドコモが11月8日に発表した2010年度冬春モデルは全28機種。スマートフォンやフィーチャーフォン、モバイルWi-Fiルーター、デジタルフォトフレームなど全方位のラインアップが用意されたが、ITmedia eBook USER的に気になるのは、やはり電子書籍に対する同社の動向だ。
この日同社から発表された28機種のうち、電子書籍端末はシャープ製の「ブックリーダー SH-07C」1機種のみ。5.5インチのタッチパネルディスプレイを搭載し、Wi-Fiのほか、下り最大7.2MbpsのFOMAハイスピードも利用可能な端末だ。
多少強引にまとめるなら、シャープがGALAPAGOSブランドで提供するクラウドメディア事業の中で提供予定の電子書籍端末のうち、5.5型のモバイルモデルがNTTドコモから「ブックリーダー SH-07C」として3G対応した形で提供されるということになる。なお、SH-07Cが「ブックリーダー」と明確に定義されていることからも分かるように、3G対応はスマートフォンであるのと同義ではなく、Kindle 3G+Wi-Fiモデルのようなものだと考えられる。
展示されていたSH-07Cは電源が入らないようになっていたため、実際の挙動などは不明だが、サービスとしてはシャープが独自に展開予定の電子ブックストアサービスに加え、NTTドコモが大日本印刷と組んで来春にも開始予定の電子書籍ストアサービスも利用可能になるという。なお、説明員によると、SH-07Cから購入したコンテンツをほかのデバイスで読むことはできないという。
この日明かされなかった年度内に発売予定のタブレット型端末1機種が気になるところだ。発表会ではシルエットのみが明かされたが、7インチのGalaxy Tabよりも大きなサイズであることを考えると、7インチ以上のタブレット端末であると予想される。ブックリーダー「SH-07C」が登場したことを考えると、シャープが提供予定の電子書籍端末のホームタイプ(10.8インチ)も候補に挙がるが、電子書籍端末でなくタブレット型端末とされていることなどを考えると、別製品が登場する可能性が高い。
この日NTTドコモは、iモード端末から利用できるマーケットストアとして「ドコモマーケット」を12月6日から提供を開始すると発表した。iモード版ドコモマーケットは「アプリストア」「MUSICストア」「BOOKストア」の3ストアで構成され、このうちBOOKストアは、サービス開始時にコミック、小説、実用書、雑誌など約3万点の電子書籍を用意するとしており、NTTドコモが独自で運営し、出版社や電子書籍の取次店からコンテンツを調達するという。なお、提供予定出版社として、朝日新聞出版、角川グループ、幻冬舎、講談社、集英社、小学館、新潮社、スクウェア・エニックスなどの名が挙がっている。
NTTドコモは、大日本印刷と提携して電子書籍事業への参入を表明しており、10月からはスマートフォン向けに電子書籍配信のトライアルサービスを開始している。実際のサービス開始は2011年春を予定しているが、BOOKストアもこの流れの中にあると考えるのが妥当だろう。展示場の説明員によると、BOOKストアは、iモード端末向けのサイトとなっているが、そのバックエンドのシステムは上述した電子書籍事業を想定した設計になっているとしており、配信プラットフォームが着々と整備されている様子がうかがえる。なお、NTTドコモの山田隆持社長からは、「iモード向けのコンテンツをスマートフォンに簡単に移せる仕組みも考えていきたいとしている」という発言もあった。
山田氏は、NTTドコモの強みは、「端末、サービス、ネットワーク」の積分だとしており、サービス面でのコンテンツ拡充施策は今後も急ピッチで進みそうだ。
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