マイコミ、電子出版ビジネスの情報誌を創刊へ

毎日コミュニケーションズは、電子書籍・電子出版に関する隔月刊の情報誌「eBookジャーナル」を11月に創刊すると発表した。主に製作・供給サイドに向けた誌面構成となる予定で、電子版も用意される。

» 2010年09月27日 20時36分 公開
[西尾泰三,ITmedia]

製作・供給サイドに向けた総合情報誌

 毎日コミュニケーションズは9月27日、電子書籍・電子出版をテーマとする隔月刊情報誌「eBookジャーナル」の創刊を発表した。同誌はPDF形式の電子版も用意され、創刊号は11月中旬の発売を予定。価格は紙版が2100円、電子版が1260円。

左から毎日コミュニケーションズの滝口直樹取締役、「eBookジャーナル」編集長を務める小木昌樹氏、富士山マガジンサービスの赤羽根弘明取締役

 報道関係者向けの発表会で毎日コミュニケーションズ取締役出版事業本部長の滝口直樹氏は出版業界の現状について、1996年をピークに13年連続で対前年比マイナスが続いており、さらに広告出稿も減少傾向にあることでダブルパンチを食らっている格好であると話す。既に既存のビジネスモデルでは対応できないとしており、そうした中で電子出版・電子書籍に対する期待は高いが、この分野の情報は整理されておらず、それらを総括するメディアが必要であるという考えを示した。

 「話題性のある刊行は久しぶり。力を入れて取り組んでいきたい」(滝口氏)

 eBookジャーナルの編集長を務める小木昌樹氏は、同誌のコンセプトを「電子出版ビジネスを成功に導くための総合情報誌」と紹介。読者ターゲットは、「電子出版にビジネスとしてかかわるすべての人たち」であるとし、主に製作・供給サイドに向けた誌面構成となる予定であることを明かした。企画としては、ハードウェアや電子書籍フォーマットといった技術的なものと、配信プラットフォームやマーケティングといった販売的なものの2つに軸足を置く考え。このほか、著作権処理やDRM、印税などのテーマについても逐次フォローしていくことで、電子出版ビジネスの制作から販売までをカバーする内容にしたいという。

 発売は奇数月の隔月刊で、紙版の判型はB5正寸の横組み、160ページ程度のボリュームとなる見込み。同社は8月に「すぐにわかる! 電子出版スタートアップガイド」を刊行しているが、重版が掛かる売れ行きであり、このことが今回の取り組みを後押ししたとみられる。

 電子版は紙版と同時発売で提供され、ファイルフォーマットはPDF。販売のためのプラットフォームは「Fujisan.co.jp」のシステムを利用し、DRMなどもFujisan.co.jpが用意しているものを利用する。Fujisan.co.jpはストリーミング形式での配信を行っているため、基本的にはインターネット接続環境が必要となるが、iPhone/iPadではキャッシュを利用し、限定的ながらオフラインでも閲覧が可能。

 隔月で提供される刊行物の間を埋めるのは、同社のWebサイト「マイコミジャーナル」。すでに同サイトでは電子書籍・電子出版関連のチャンネルやカテゴリを整備し、そこで日々の最新情報をカバーしたい考えだ。また、セミナーも積極的に開催していきたいという。

 なお、発行部数は紙版が2万部、電子版が5000部を計画している。紙版に対する電子版の数字はかなりチャレンジングな印象だが、定期購読での需要を期待しているとみられる。紙版、電子版ともに定期購読を受け付けており、電子版は年間定期購読料5040円、1号当たりだと840円相当となる。また、紙版の年間定期購読を2010年内に申し込んだ場合、1年間限定で電子版を無料でバンドルするキャンペーンが実施される。

 同誌は「電子出版の実験誌」(小木氏)と位置づけられており、EPUBやアプリ形式での配信、さらには企画ごとのばら売りなども試行錯誤しながら進めていきたいとした。試行錯誤と言えば聞こえはいいが、同社もまた、電子出版ビジネスにおける最適解を決めかねているようにも見えた。

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