「iPhone 4」が再びすべてを変えるのかWWDC 2010現地リポート(2/3 ページ)

» 2010年06月09日 19時20分 公開
[林信行,ITmedia]

iPhone 4はデジカメ業界にも脅威?

iPhone 4は500万画素カメラを内蔵した

 iPhoneは多くの業界に影響を及ぼす製品だ。すでにこれまでのiPhoneも、携帯電話業界だけにとどまらず、携帯型ゲーム機や電子書籍、POSシステムなどの専用業務端末にまで影響を及ぼし始めている。そして今回のiPhone 4では、その影響がデジタルカメラやデジタルムービーの世界に及びそうだ。

 これまでデジタルカメラやデジタルムービーで人々が何をやっていたかを振り返ると、まずはそれらの機器で写真や動画を撮影し、それをPCに取り込み、場合によっては加工し、印刷したり、DVDに焼いたり、PCの画面を使って人に見せる、ということだった。

 このうち、加工の部分は少し手間がかかるものの、そのひと手間を加えるだけで、素人が撮った作品でも、見違えるような作品になることを、MacでiMovieを使ったことがある人であれば、一度は体験しているはずだ。

動画撮影だけでなく動画編集もiPhoneで完結できる

 今度のiPhoneでは、そのiMovieが4.99米ドルのアプリとしてiPhone上で利用可能になった。写真や動画の撮影もiPhoneなら、それを加工するのもiPhone。そしてそれを人に見せるのもiPhoneとなることで、日常生活において写真や動画に接する時間が劇的に変わることになるだろう。これまでそうなることをさまたげている理由があるとすれば、より高解像度、よりいいレンズを搭載したデジタルカメラに比べて、かつてのiPhoneの画質が劣っていたことだが、今回はその壁がかなり部分で取り払われたといっていい。

 iPhone 4のカメラは、美しく撮ることのバランスを考えた500万画素のカメラに生まれ変わった。スティーブ・ジョブズ氏が「多くの人が解像度を語る中、我々はどうしたら美しい絵が撮れるかを問い続けている」とコメントするだけあって、アップルは単に解像度だけを上げて「画質をよくした」と結論づける単純なアプローチはとらなかった。解像度を上げるだけでなく、低照度にも強い裏面照射型CMOSセンサー(back-illuminated sensor)という技術を採用した。これはこだわり派のユーザーから人気が高いリコーの「CX3」なども採用する技術だ。これに加えてLEDのフラッシュも搭載している。

より美しく高精細になったディスプレイ

 ディスプレイの解像度も326ppi――人間の網膜の認識能力の限界を超えた密度を実現した“Retina Display”にした。これまでのアップル製品はiPadを含め、実はそれほど高い画面解像度でなくても、発色のよさと視野角の広さを備えたIPS液晶パネルを使うことで、他社の高解像度液晶製品より美しく見せていたが、今回のiPhone 4では、同じ明るさとコントラスト比と視野角の広さを備えたIPS液晶のまま、解像度も人間の感覚器の能力を超えるレベルにまで上げてきた。この画面の美しさを例えるなら、きれいではあるがSD画質のテレビ映像を見た直後にハイビジョン映像を見た時のような、「これまで十分きれいに見えていたつもりだったけどさらにクリアになった」という、あの独特の感覚を味あわせてくれる。これが常に持ち歩く携帯電話に収まっているのだから驚きだ。

 これに対して、日本のケータイはもっと高解像度なカメラ、液晶ディスプレイを備えた製品が出ているよ、という反論もあるだろう。しかし、実際に写真や動画を撮って、編集して、それを見て楽しむ、というところまで含めた体験、操作の簡単さやレスポンスのよさ、そして楽しさといったもののバランスからおりなされるトータルの体験で比べると、iPhoneの域に達しているものはないのではないかと筆者は思う。実際にiMovieで編集している様子や、Wi-Fi経由のテレビ電話「FaceTime」のデモを下に掲載した。

iMovieでの動画編集やマルチタスクの様子


One more thingで紹介されたFaceTimeのデモ


これまでの加速度センサーに加えて3軸ジャイロセンサーも搭載

 iPhoneの動画撮影機能とiMovie for iPhoneの組み合わせは、機能の豊富さだけを優先したコンパクトデジタルカメラを、かなり苦しい立場に追い込むかもしれない(そうしたモノ作りをしてきたメーカーには、今こそ立ち止まって、今後どういうモノ作りをしていけばいいのかを考え直してほしい)。

 ちなみにiPhone 4が新たに脅威となるのはデジタルカメラ市場だけではない。これまでのiPhoneがすでに強かったゲームの市場においても、新たに搭載された3軸ジャイロセンサーと、従来の3軸加速度センサーの組み合わせが、新しいゲーミングの可能性をもたらしてくれそうだ。

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