林信行がおすすめする「iPad」プレゼン術iPadが変える未来(1/3 ページ)

林信行が米国版iPadを1カ月間、日本版iPadを1週間ほど使って発見した「iPadの見せ方」「iPadの楽しみ方」を紹介していく。国内向けWi-Fi+3G版のインプレッションも。

» 2010年05月26日 04時00分 公開
[林信行,ITmedia]

 いよいよiPadが国内で発売される。米国では初代iPhoneの2倍のペースで売れているという同製品だが、日本向けモデルも発売初日(5月28日)の出荷分に続き、すでに6月7日出荷分まで完売してしまうという人気ぶりだ。iPadは世界の携帯電話事業者だけではなく、出版社やゲームメーカーをも巻き込み、市場に大きなインパクトをもたらすだろう。筆者はこれまで米国版を1カ月、日本向けの3Gモデルを1週間使ってきたので(ちなみにこの原稿もiPadのメモ機能を使って執筆した)、そのインプレッションをまとめていく。iPadはあなたの生活をどのように変えるだろうか。


画面が大きくなれば、何をやるのも楽しくなる

日本向けのiPad Wi-Fi+3Gモデル

 iPadは使う人を映し出す鏡だ。電源を切ったまま画面を覗き込むと、ガラスのタッチパネル液晶が鏡のようにユーザーの顔を映し出す。また、電源を入れれば、画面の中の世界に登録したお気に入りの音楽や撮りためた写真、そしてAppStoreで購入した厳選アプリの数々が、そのユーザーの人となりを映し出す。

 iPadの小さな兄貴分、iPhoneには、虫眼鏡の代わりになるものから、犬の写真を撮る専用のカメラまで20万本のアプリがそろっているが、iPad専用のアプリにしてもすでに5000本近くあると言われている。iPadを塗り絵に変身させるアプリ、自分が投票した政治家が活躍しているかどうかをチェックするアプリ、そしてアメリカではテレビを無料で視聴するためのアプリも登場している。9.7インチの液晶画面を持つ1枚の薄い板が、アプリケーション次第で、ワープロにもメールにもニュースリーダーにも楽器にも姿を変えるのだ。

 そのiPadを1カ月使った感想を紹介しよう。最初の3〜4週間はいわゆる“ハネムーン期”で、これまでPCでやってきたことをとにかくiPadでやってみるというだけでも楽しかったのだが、しばらくすると(周囲にはまだiPadを持っている人が少なかったこともあり)、さまざまなiPadのデモを通じて、どんな見せ方をすれば確実に“受ける”のか、鉄板のデモンストレーションが分かってきた。

The Guardian Eyewtinessはひたすら写真をめくるだけのアプリだが、世界の出来事を切り取った写真の美しさに心を動かされる

 例えば、初めてiPadを体験する人にまず見せるのは、英国THE GUARDIAN紙の「The Guardian Eye Witness」というアプリだ。世界中のフォトジャーナリストから日替わりで寄せられる写真を指でめくり、iPadが映し出す画面の美しさを確認してもらう。続いて見せたいのが、アップルのiBooks。ライブラリから「クマのぷーさん」の本を開き、ページをめくる様子を楽しんでもらう。

 ところで、iPadの情報を詳しく追っている人は、iBooksの日本での展開が気になっていたはずだ。アップルの電子書籍サービス「iBooks」は、当初米国のみでの提供で、このサービスが日本ではまったく利用できないのかと心配している人がいるかもしれない。とりあえず、iBooksのアプリはダウンロードできるようだが、iBooks用の本を購入するiBookstoreには、有料の本は置かれておらず、現時点ではプロジェクトグーテンベルクでデジタル化された著作権が切れた無料の本しか入手することができない(おまけの「クマのプーさん」の本は、日本版iBooksにも付属している)。iBooksは日本語の縦書き表示に対応していないので、日本語の本が読めるのはしばらく先になりそうだ。

アップルの電子書籍リーダー「iBooks」は日本からでも利用可能。クマのプーさんの本がおまけとしてついている

日本のiBookstoreには、著作権切れの無料の本しか置かれておらず、米国のベストセラーなどを買うことはできない

 もっとも、だからといって残念がる必要はない。日本の本はnagisaworksの「iBunko HD」(600円)で楽しむことができる。こちらも著作権フリーのものが中心だが、縦書きにも対応し、700グラムの“板”に300冊近い本を入れて持ち歩けることを紹介すれば、それだけでiPadに興味を持つ人もいるはずだ。

「iBunko HD」を使えば、青空文庫などの日本の文学作品を読める。縦書きの本にも対応

 誰もが声をあげて喜ぶのは、ディズニーのTOY STORYの読み聞かせ絵本アプリ「TOY STORY READ ALONG」だろう。まずはアプリを起動して、絵本を読み上げている所を見せ、ページをめくって映画と同じ声優のトムハンクスの声が入っていることを確認してもらう。そこですかさずメニューボタンを押し、読み上げ音声をお母さんの声で吹き替えられることを紹介する(子どもは大喜びだ)。さらにページをめくり、映画のシーンの動画が混じっていることや、ゲームが用意されていることを見せた後で、バズライトイヤーが現れたら、同じ絵本が塗り絵にもなることを体験してもらう。さらに塗り絵にも飽きたら、メニューから主題歌のカラオケを呼び出せることも紹介する、といった具合だ。

塗り絵やゲームも楽しめる読み聞かせの絵本「Toy Story Read-Along」。第1巻は無料だ

 iPadに便利さを求めているユーザーには「Log Me In」がいいだろう。iPadに自宅のPC画面を呼び出して、自由自在に操作する様子を実演する――iPadが広く普及すればどうしてノートPCを持ち歩く機会が減るのか、これを見れば気付くだろう。また、「Adobe Ideas」で絵を描き、メールで送るデモも直感的で分かりやすいし、「Audio Note」で録音しながらメモを取ったり、メモを指でタッチして、録音音声の頭出しをする様子を見せれば、iPadを便利なツールとして紹介する十分なデモになるはずだ。

「LogMeIn」を使えば自宅のPC画面を呼び出して操作できる。Mac/Windows両対応だ(画面=左)。「Adobe Ideas」を使えば、手描きで簡単にメモが描ける(画面=中央)。AudioNoteは、One NoteやMac版Word for macのWord Note機能のような、メモと録音音声を同期する記録ノート(画面=右)

 ゲーム好きには何がいいだろうか。iPadが最強のゲーム機であることを見せるには、迫力のある「X-plane 9」と「Bruce Lee Dragon Warrior」が最適だ。美しいグラフィックスと直感的な操作を見せたければ「Mirror's Edge」を、分かりやすさで攻めるなら「Pinball HD」を紹介すればいい。家族や友達と一緒にボードゲームで楽しむスタイルを提案したいなら「Ludo」を起動し、iPhoneとの連携による新しいゲームのスタイルを紹介したければ「PadRacer」がある。これだけ見せれば、「iPadには興味がない」と言っていた人の大半が考えを変えるはずだ。

本格的な3Dグラフィックスが目を引くフライトシミュレーター「X-plnae 9」(画面=左)。Buce Leeのゲームアプリ。ブルースの動きがなかなかリアルで楽しく、これまでの携帯型ゲーム機にはない、画面の大きさを生かした迫力がある(画面=右)

標準のフォトアルバムには、iPhoneにはない撮影地別表示などの機能が用意されている

 だが、もしデモに割く時間がまだあるのなら、iPadの基本機能がとてもすばらしいということを是非紹介したい。最大9個のタブを切り替えながらWebブラウジングをするのは気持ちがいいし、iPadを横向きにして電子メールの仕分け(編集ボタンをタップ)をする作業も、見ているだけで楽しいものだ。

 フォトアルバムにiPhoneで撮った旅行写真をたくさん取り込んでおけば、アルバムの「撮影地」機能で写真を楽しむこともできる。例えば「東京で撮った写真を見てみよう」と、東京の上に表示されたピンを指でタップし、表示された写真の束をピンチインして開く、「次は京都の写真を見てみよう」と今度はそちらのピンをタップする、といった具合に、撮影した場所で自動的に仕分けされた写真を地図上から次々と見せていく。もちろん、Macユーザーなら、iPhotoの顔認識機能を有効にしておくことで、写真に写っている人を自動的に認識し、人ごとに表示してくれる機能がオンになる。

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