「高級Netbook…だと…?」 iPadの活用法を考えてみるiPadリポート総集編(3)(2/2 ページ)

» 2010年04月30日 12時00分 公開
[鈴木淳也(Junya Suzuki),ITmedia]
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iPadの活用方法をいろいろ考えてみた

 これまでいろいろな場面でiPadを使ってきたが、とりあえずの結論は、iPadを使うだけのコンテンツが現状ではまだまだ不足しているということだ。また、iPadを使っていて気付いたのだが、オフライン状態で使えるコンテンツが意外と少ない。筆者のよく使うニュース系アプリやサービスは、そのほとんどがオンライン状態を前提にしているため、移動中の利用も難しい。家であればMacBook、出先であればiPhoneがあるわけで、iPadの使いどころがない。というわけで、iPadの活用法をいろいろ考えてみた。

  • 出先で電子書籍リーダーにする

 筆者はゲームをしないので、出先で使える数少ないコンテンツの1つが電子書籍だ。これであれば好きなときに好きな本を読め、iPadらしい活用法だといえる。問題は屋外での視認性だが、下に掲載した写真を見れば分かるように、日光の下では正直、画面を見るのはきつい。実際はこれよりもう少し文字が見えるので、まったく読めないレベルではないものの、Kindleなどの電子ペーパーに比べると差は歴然としている。

日中の屋外でiPadのiBooksを見てみたところ。視認率はこの程度だ。ただし直射日光を避けて少し角度を調節すると、かなり読みやすくなる。iPadは輝度を最大にしてもバッテリー消費はそれほど変わらないため、輝度は高めくらいがちょうどいいかもしれない

  • 移動中のひまつぶしアイテム

 飛行機で移動する際のお供として何度かiPadを持ち歩いてみたが、iPadの実力を最も感じたのが“ひまつぶし”だ。前述のようにオンライン前提のコンテンツは使えないものの、ゲーム、電子書籍、音楽、映画、仕事まで、バッテリー消費に気を使わずに使い続けられる。例えば、サンフランシスコから日本までのフライトは11時間半だが(その日は飛行時間が長かった)、電子機器利用可能のサインが出てからゲーム(麻雀半荘×10で2時間)、映画(1回2時間半の「Dark Knight」を1.5回分上映)、アクションゲーム(Street Fighter IVやiPad用3Dドライブゲームなど各種を2時間)、食事中の音楽(1時間弱)、仕事で原稿書き(1時間強)と11時間近くフル稼働させても、まだバッテリー残量が30%も残っていた。Wi-Fi機能がオフになっていたせいもあるが、このペースなら15時間は余裕で使えるだろう。特に便利だと感じたのが映画で、iPad純正ケースを変形させてフォトスタンドモードにすると、エコノミー座席でも映画を観るのにちょうどよかった(ただし、途中で通路際を通過した人に袖を引っかけられてiPadごと吹き飛ばされたが……)。

飛行機の11時間半のフライトで、バッテリーの減る様子を追いかけたところ。時計進み具合とバッテリー残量に注目。途中、ゲームで遊んだり、映画を見続けたりと、フル稼働させてもまだ余裕があった

 なお余談だが、iPadはまだ非常にめずらしかったようで、通過した空港では何度も途中で呼び止められる状態だった。サンフランシスコで遭遇したある空港職員は、荷物検査でiPadを通した後、「これをもう一度スキャンしていいか?」と取り出して、2回もわざわざスキャンしていたようだ。しかも荷物を持ってきて中身を取り出した後、「これがウワサのiPadか?」「容量と価格は?」「カメラはついてるのか?」「GPSは?」と矢継ぎ早に質問したうえ、隣にいた別の係官にまで自慢を始めた。単にミーハーなだけだったようだが、あとで別の乗客にもiPadについて突っ込まれたり、貸してと言われたりと、かなり注目度が高いことは分かった。また、後で判明したことだが、米国で空港等の保安検査を行っているTSAが、iPadはノートPCとは異なり、カバンから出して荷物検査する必要はないとの通達を出している。旅のお供にぴったりだ。

  • iPadを仕事道具として使う

 とはいえ、筆者が飛行機で移動するのは1カ月平均で数回程度なので、それほど頻繁に機内のひまつぶしをiPadに頼るわけでもない。しかも移動の半分近くは片道2時間以内の近距離路線なので、iPadを出すヒマさえないくらいだ。そこで活用方法をいろいろ考えていたところ、バッテリーの驚異的な動作時間を利用して、いわばNetbook的な仕事マシンにすることを思いついた。筆者のような文筆業であれば、調べ物のためのWebブラウザとメール、原稿執筆のための文書作成ソフト、写真を管理するためのアプリがあれば十分だ。現時点で写真を取り込む方法がないものの、残りの問題はクリアしている。

 では文章作成マシンとしてiPadを考えたとき、その使いやすさはどうだろうか。まずはソフトウェアキーボードの例で紹介してみよう。

 これが入力例だ。同時タッチ認識数が多いため、iPhoneよりもさらにスムーズに入力できる。とはいえ、入力のフィードバックがないため、それほどヘビーな入力に対応できるわけではない。そこで、以前のリポートでも登場したApple Wireless Keyboardを組み合わせてみる。

 こうなると、もう普通のPCと一緒だ。一気に入力が快適になる。日本語キーボードと英語キーボードの切り替えは「Command」+「Space」だ(これはMacと同じ)。キーバインドがMac標準方式に縛られる、変換エンジンが「ことえり」という弱点はあるが、ある程度の“くせ”に慣れれば、かなり高速な入力が可能だ。

 最大の問題はインラインでの変換候補から溢れたときで、もし候補選びのためにスペースキーを押し続けて文章近くの候補一覧からはみ出た場合、画面下のほうにさらに多くの候補一覧が登場する。問題は、これが表示されるとキーボードでの操作をいっさい受け付けなくなることで、画面にタッチして候補を選択しなければ先に進めず、いったん入力が止まることになる。「キーボードを叩いてはたまに画面にタッチする」という動作はiPad独特の奇妙な風景だ。

 なお、このキーボードのすごいところは、ショートカットキーがそのまま使える点だ。例えば「Command」+「C」「V」「X」といったコピー&ペーストに関するもののほか、「Command」+「Z」によるアンドゥ、「Command」+「A」で全選択が行える。カーソルキーによるカーソル移動のほか、シフトキーを押しながらカーソルキーを動かすことで範囲選択が行えたりなど、操作感覚はPCそのものだ。また輝度の調節、音量調節、音楽の再生やスキップなど、特殊キーでの操作もそのまま受け付ける。

 上に掲載した動画のような形で、iPad購入後のリポートのいくつかをまさにiPadで執筆してみたのだが、思ったよりストレスなく文章を入力できたと感じている。難点はiPadとキーボードの両方を持ち歩く必要があることだが、これでも筆者のメインマシンであるMacBookよりは軽い。しかも筆者のMacBookのバッテリー駆動時間は2〜3時間程度だが、iPadならほぼ1日作業しても問題ない。これは大きなアドバンテージだ。

 しかし、実際に仕事でしばらく使ってみて、正直まだまだ仕事道具の代用にはきついとも思うようになった。理由の1つはアプリ切り替えのわずらわしさだ。調べ物のためにWebブラウザを起動する場合、文書作成アプリ(iWorkのPages)を終了して、次にSafariを起動するといった具合で、しかもSafariで複数のページを開いていた場合、ページを切り替えると再読み込みがかなりの確率で発生する。タブブラウザのような使い方はできないのだ。メールが到着した場合も、アプリの切り替えが発生し、筆者の仕事でよく使うIMも常駐できない。文章作成に専念するならともかく、PCで行っていた作業をそのままiPadに持ってきても効率が落ちるだけだろう。

 もっとも、これら問題はiPhone OS 4で採用されるマルチタスク機能でカバーできるはずだ。iPad版のiPhone OS 4の登場は今年秋予定と若干遅いため、“iPad仕事マシン化計画”はしばらくおあずけとなるが、バッテリー駆動時間の長さと将来的可能性という2点では非常に大きな魅力を感じている。

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